「5時からの人」(2019年10月20日週報巻頭言 牧師 藤井秀一)

マタイの福音書の主イエスのたとえ話のなかに、ぶどう園に日雇いの労働者をやとう主人の話があります。

主人は労働者を雇うために、「夜明け前」「9時」「12時」「3時」と広場に出かけ、

仕事を終える直前の「5時」にも、まだその日の仕事にあぶれていた労働者を雇い、

しかも報酬は、最後に来た人も朝から来た人も、すべての人に同じ一日分の報酬を手渡す主人の話です。

この話を読んで思い出すのは、私が30代の頃、13年勤めた自衛隊の音楽隊をやめて、フリーターをしていたころのことです。

時はバブルがはじけた直後。安アパートに住み、夜学の神学校に通うために、昼は時給800円の飲食店で働いていました。

食費を切り詰めても、貯金は減りつづけ、生活の不安とこれからの人生に希望が持てなかった頃の、真っ暗な気持ちを思い出します。

さて、ぶどう園の主人は、朝から雇った人だけではなく、9時、12時、3時、そして、もう仕事も終わる5時にも、広場に出かけ、人をぶどう園に招き続けました。

この主人の「気前良さ」が示す「天の国、神の国」のありがたさに、「気付き」、「味わい」、「喜ぶ」ことができた人は、朝から雇われた人々ではなかった。

むしろ、その日一日仕事がなく、生活の不安を抱え、恐らく「自分には価値がない」「人生に希望など持てない」と真っ暗な気持ちの中にいた人々であったというこの話。

この「神の国の福音」は、今、あなたにとどいていますか?

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